ダブル不倫(W不倫)の慰謝料は?
ダブル不倫(W不倫)とは
「ダブル不(W不倫)」という用語は世間一般の俗称であり、何か厳密な定義があるわけではありませんが、要するに「既婚者同士の不倫」のことを指しているようですから、当HPでもそうした意味でこの用語を使っています。
ダブル不倫の場合、双方の家庭で、不倫慰謝料請求権が発生します。
<以下 「B」と「C」の間で、不倫関係がある場合>
(モデルケース)
家庭①:夫(A)=妻(B)
家庭②:夫(C)=妻(D)
↓
◆AからCに対する慰謝料請求権が発生(A→C)
◆DからBに対する慰謝料請求権が発生(D→B)
検討事項1 ダブル不倫の場合どうなるか
ダブル不倫の場合、上記モデルケースのとおり、不倫行為の当事者でない者(A・D)から、不倫行為の同性当事者(B・C)に対して、それぞれ慰謝料請求権が発生します(A→C・D→B)。
ただ、ダブル不倫の場合であっても、常に双方の慰謝料請求が顕在化するわけではありません。上記モデルケースでは「B」と「C」が不倫関係になっているので、Bの夫「A」がCに慰謝料請求をしたとします(A→C)。
ここで、Cが自らの不倫行為を妻「D」に打ち明けるかどうかですが、これはケースによって展開が異なり、Cが何とか内密に済ませようとする場合も考えられます。
したがって、最後までCの不倫行為が妻Dに発覚しなかった場合、ダブル不倫であっても、実際に顕在化するのは「A→C」という慰謝料請求のみだったという展開は、一般的にも見られるものです。
ただ、どこかの段階で妻Dが今回の不倫を知り、自らの夫と不倫をした女性Bに慰謝料請求を行う可能性は、消滅時効の成立や除斥期間の経過まで残ります。これは、A→Cという慰謝料請求を解決する中では解決ができない事項なのです。
Dが今回の不倫を知り、DもBに対して慰謝料請求を起こした場合については、以下で解説しましょう。
検討事項2 双方、慰謝料請求を打ち合う関係になった場合
ダブル不倫が双方の配偶者に発覚してしまい、A→C・D→Bと、2つの慰謝料請求が具体的に発生した場合はどうなるでしょうか。
請求態様で見ると、A→C・D→Bとなっていますから、人間は重複しておらず、全く別々の案件です。
ただ、このケースで、AB夫婦とCD夫婦が不倫発覚後も、特に離婚や別居などをせずに一緒に住んでいる状態を想定すると、結局は2つの家庭で、慰謝料請求を打ち合っている状態とも表現できるかと思います。
このケースで、例えばAがCから100万円の慰謝料を獲得し、DがBから100万円の慰謝料を獲得した場合、家庭単位で見ると100万円を双方で交換しただけなので、お互いプラスもマイナスもないという状態に陥るとも考えられます。
このように、もしダブル不倫発覚後、離婚も別居もしていない双方の家庭が慰謝料請求を打ち合う状態になった場合、弁護士に依頼して徹底的に争ったとしても、最終的には双方痛み分けともいえる結論に落ち着く場合があり得ることは一応知っておいてください。
ただ、実際には不倫の当事者(BC)が、今回の不倫関係を形成・維持するために果たした立場は、ケースごとに様々です。
例えば上記モデルケースで「上司Cが、自らの立場を利用して部下Bに執拗に交際を迫った」という事情があるとしたら、CがAに支払う慰謝料の方が、BがDに支払うべき慰謝料よりも高額になると考えることが適切かもしれません。
そうした場合にABCD全当事者が関与した形で交渉を進め、CがAに一定額の慰謝料を支払うことで、ABCD全ての賠償問題を清算する内容の示談を一度に成立させることも、交渉の推移によっては十分ありうる話かと思います。
このように、ダブル不倫の場合、未婚者に対して不倫慰謝料を請求するケースよりもさらに話が複雑になってきますから、慎重に状況の推移を見ながら進めていく必要があります。
検討事項3 ご自身の配偶者との関係
あまり頻繁に起こるケースではなく、ダブル不倫に固有の問題でもありませんが、ご自身の配偶者に対する慰謝料請求権の話についても一応ご紹介します。
上記モデルケースでは、Aは不倫相手であるCに対して慰謝料を請求しうる関係にあります(A→C)。ただ、不倫とはCとBが一緒に行ったもの(共同不法行為)ですから、AはCに対する慰謝料請求権(A→C)と同時に、自らの妻Bに対する慰謝料請求権(A→B)も有しています。
実際には、Aが妻Bと今後も夫婦関係の継続を望んでいる場合や、離婚はしても不倫慰謝料請求は不問にするという場合がありますから、自らの配偶者に対する慰謝料請求(A→B)は顕在化してこないことも多いですが、場合によっては離婚した上で、不倫相手Cと元妻Bの両者に対して慰謝料を請求したい、というご希望をお持ちの方もいらっしゃいます。
ダブル不倫であっても離婚済の場合は、元妻BがDから慰謝料請求されたとしても、元夫Aにとっては関係が無いことなので、一般的な手法でCとBに対する慰謝料請求を進めていけばよいでしょう。
こうしたケースについても当事務所で取り扱い可能ですから、法律相談の際にお気持ちを打ち明けていただければと思います。
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2013年6月3日