遠方で不倫慰謝料の裁判を起こされた場合(電話会議の活用)
遠方の裁判所で不倫慰謝料の裁判を起こされた場合、常に現地の裁判所まで出頭しなければならないのでしょうか?
こうした場合、いわゆる「電話会議」という制度を用いることで、現地の裁判所まで出向かなくとも裁判を進めることができます。
「電話会議」の活用によって、遠方の裁判所に出頭するための「弁護士日当」や「交通費」を節約することもできますから、非常に遠方の裁判であっても、常に多額の経費がかかる訳ではありません。まずはご相談ください。
裁判の管轄
不倫慰謝料請求の裁判は、原告(裁判を起こす側)の住所地を管轄する「地方裁判所」で起こされることが通常ですから、当ページでは地方裁判所での進行を前提にご案内します。
裁判の管轄が相手の居住地域に発生する関係上、「不倫相手の夫婦が、現在は遠方に引っ越している場合」や、「不倫交際の相手が、単身赴任者である場合」など、不倫相手の配偶者が遠方在住の場合には、非常に遠方の裁判所で裁判を起こされることがあります。
名古屋にお住まいの方について、東京や横浜で裁判を起こされたといったご相談は、当事務所でも時々みられます。
「電話会議」とは?
遠方で裁判を起こされた場合、どのように対処すべきでしょうか。
裁判期日は、平日の日中に行われ、裁判を起こした側(原告)、裁判を起こされた側(被告)の双方が裁判所に出頭して主張を述べるのが、裁判の原則的なスタイルです。
ただ、裁判所が非常に遠方であるなど簡単には出頭できない事情がある場合、裁判所で特殊な電話機を用いることによって、当事者の一方が裁判所に出頭しなくとも裁判期日に参加できる制度があります。実務上、「電話会議」と呼ばれている方法です。
この「電話会議」では、郵送やファクスによって主張書面の提出を行うことや、「裁判上の和解」を成立させることも可能です。
不倫慰謝料請求の裁判は、最終的に「裁判上の和解」が成立して終結することが非常に多いですから、「電話会議」を用いることによって、結果的に現地の裁判所には一度も行かずに解決できる可能性も十分にあります。
電話会議の進め方
「電話会議」は裁判所が相当と認めた場合に実施されるものであり、常に利用可能というわけではありません。ただ、それほど適用条件が厳しいわけではなく、一般的に広く用いられている制度です。また原告・被告どちらの側でも「電話会議」を利用可能ですが、多くの場合、「裁判を起された側(被告)」にとってメリットのある制度となるでしょう。
遠方の裁判所で裁判を起こされた場合、あなたの依頼を受けて「被告訴訟代理人」となった弁護士が、裁判所に対して「遠方のため電話会議を利用させてください」という上申を行います。裁判所は相手(原告)の意見も聞きつつ、総合的に判断して電話会議の可否を決定します。
電話会議の利用が認められた場合、裁判の開廷日時に、被告訴訟代理人となった弁護士が自分の法律事務所で待機していると、裁判所から電話が掛かってきます。
この電話は、いわゆるグループ通話のように、「裁判官」「原告」「被告」の3者が同時に話をすることができます。
この方式により、こちらは現地の裁判所に出向くことなく、遠方で開かれている裁判期日への参加が可能となるのです。
裁判期日において、基本的な事実関係の理解に双方大きな相違がないことが確認できれば、あとは慰謝料の金額や支払方法について、裁判官の主導により調整が行われ、「裁判上の和解」が成立して裁判が終了となるケースも実務上は多いです。
尋問・判決になる場合に注意
「電話会議」は出廷の負担を軽減できる便利な制度ですが、利用できない局面もあります。
不倫の事実関係や慰謝料の金額について、原告と被告、双方の考え方や主張が大きく異なり、どうしても和解を成立させることが難しい場合、最終的には「判決」となります。
このように裁判が「判決」という局面になると、「電話会議」で最後まで終わらせることはできません。あなたの訴訟代理人となった弁護士が、現地の裁判所へ出頭することが必要となります。
また通常、「判決」の前には当事者本人や証人を裁判所に呼び、裁判官が直接話を聞く「尋問」という手続が実施されます。裁判所の判断にもよりますが、裁判を起こされたご本人についても、現地の裁判所への出頭が必要になる可能性があります。
このように、裁判が「判決」や「尋問」の局面まで進んでしまった場合、代理人弁護士やご本人様が、現地の裁判所へ出向かなければならなくなる可能性があります。
とはいえ前述のとおり、不倫慰謝料請求の裁判は大部分が「裁判上の和解」で終了していますから、「判決」や「尋問」になる展開を、最初から過度に恐れる必要はありません。
相手の態度や要求金額など、案件に応じて対応を検討し、解決方針を提案させていただきます。
仮に遠方の裁判所へ出頭することとなった場合の「日当」や「交通費」についても、法律相談の段階で詳細をご案内します。ご心配なことがあれば、何でもおっしゃってください。
実際に出廷することが適切なケースもあります
「電話会議」は便利な制度ですが、メリットばかりではありません。
「電話会議」は、電話が通じている間の音声しか聞こえず、裁判官や相手弁護士の表情も見えませんから、現地の雰囲気や状況の流れを感じ取りにくいというデメリットもあります。
代理人弁護士による訴訟追行は本来、裁判官や相手弁護士の表情や反応を目前で感じつつ状況判断を行い、その場での適切な発言や対処方法を選択していくものです。争点や事実関係が複雑な案件では、現地の裁判所へ弁護士が出頭した方がよいケースもあります。
ただ遠方出張の場合、どうしても弁護士の「日当」や「旅費」という経済的負担が生じてしまいますから、案件の内容や裁判の進行に応じて、電話会議を用いるか、現地への出廷を行うかどうか、ケースバイケースでご提案をさせていただきます。
まずはご相談を
このように「非常に遠方で裁判を起こされた」場合、可能性としては様々な展開がありうるものの、弁護士にご依頼されることで、さほど大きな問題に至らないまま対処可能なケースが実際には多いかと思います。
いずれにしても裁判を起こされてしまった以上、きちんと受けて立つ以外の選択肢はありません。
弁護士が全力でお手伝いしますから、ご心配は無用です。
相手から訴状が届いたら、すぐに当事務所までご相談ください。
弁護士コラム TOPページへ戻る
2018年3月7日