相手の弁護士から「事務所に来てください」と呼ばれている方
「あなたにも言い分があるでしょう。お聞きします」
「書面を自宅に送られると困るでしょう。お渡ししますから、来てください」
このような論調で、相手の弁護士から「私の法律事務所に来てください」と言われたら、どうすべきでしょうか?
結論から申し上げますと、相手弁護士の事務所に行くことなど、まったくお勧めできません。あまりにもリスクが高すぎます。
常識的に考えてみましょう。相手は、あなたに慰謝料を支払わせようとしている、法律や交渉の専門家です。
ただ単に「言い分を聞いてあげるため」や「書面を渡してあげるため」に、わざわざ時間を割くような事が考えられるでしょうか?
あなたは、見知らぬ法律事務所に呼び出され、弁護士と個室で向かい合って、自分のペースで最後まで、不利な言動をしないよう適切に判断しながら話をする自信がありますか?
一般の方が、不用意に相手弁護士の事務所などへ出向いていけば、いい様にしゃべらされ、不利な発言、重要な情報を引き出されてしまう危険があります。
もちろん、そうした情報は、後であなたに対する交渉や裁判の証拠として使われるのです。
不利な証言や情報を取られてしまった場合、後で弁護士に相談・ご依頼をされたとしても、すでに生じてしまった不利な流れを変えることは難しい場合があります。
相手の弁護士と会う約束などはせずに、一刻も早く弁護士の法律相談を受けるべきです。
こちらの言い分を伝えたい?
あなたにも色々な言い分があることは、もちろん承知しています。
「相手の方から、しつこく誘われた」「結婚生活は破綻していると聞かされていた」
といったご事情は、とても多くみられるものです。
しかし、相手の弁護士にあなたの言い分を訴えたところで、「あなたの言うことは、もっともです。では慰謝料の請求は止めておきましょう」とは、なりません。相手の弁護士は、あなたから慰謝料を1円でも多く取ることが仕事なのであって、あなたの言い分を聞き、公平な判断を下す立場ではないのです。
相手の弁護士と直接会って、あなたの言い分や反論を主張しても、あなたにとって良い事などは何もないと言わざるを得ません。
相手弁護士の事務所に行かないと、どうなるか?
相手弁護士の呼び出しに応じずに、事務所に行かなかった場合は、どうなるでしょうか。
「相手の言うことを聞かないと、裁判を起こされるかも」というご心配は、確かに一理あります。
しかし、たとえ相手弁護士の事務所に行ったとしても、裁判を止めてもらえる保証などは元々ないのです。
むしろ相手弁護士の事務所へ行って色々しゃべってしまい、不利な情報や証言を取られてしまった結果、それを証拠にして裁判を起こされたというケースは実際にみられます。
「相手の言うことを聞けば穏便に終わるのではないか」というお考えの上で、相手弁護士と会おうとしている方も、いらっしゃるかも知れません。
しかし中途半端な譲歩は、あなたをより不利にしてしまう危険があることも念頭に置いておいてください。
最終的にどうされるかは、こちらも弁護士の法律相談を受けていただいた後で、判断された方が良いのではないでしょうか。
ご注意いただきたいこと
今回お伝えしたい事は、「相手弁護士の事務所になど出向いて行っても、リスクばかりで良いことはないですから、早めにこちらも弁護士に相談してください」という意味であって、「相手弁護士からの呼び出しを無視しても大丈夫」という意味ではありませんから、その点は注意してください。
どんな交渉でも、最低限の誠意や信頼関係は必要です。なかなか連絡がとれない、書面を送っても反応がないという相手の場合、相手としても強硬な方針を選択せざるを得ず、必要以上に解決が困難となってしまう可能性があります。
弁護士にご依頼をいたたいた場合、あなたの代わりに弁護士が相手本人や相手の弁護士との間できちんと話をして、適正な内容の示談を成立させるように、交渉や裁判を進めます。
ご不安な点、不明な点などは法律相談にてご説明を差し上げておりますから、まずは相談予約をお申し込みください。
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2014年6月17日