裁判の進み方

不倫慰謝料について、金額面や条件面で相手と折り合うことができなかった場合、「裁判」「訴訟」という解決手段を検討しましょう。

「裁判」という言葉を聞くと、何か「難しい」「おおごとになってしまう」と感じられるかもしれませんが、不倫慰謝料を素直に支払ってこない相手に対し、「裁判」はとても有効な対処方法です。

また弁護士に依頼されていれば、「裁判」を起こすことは、全く難しい手続ではありません。

「裁判」について具体的なイメージを持っていただけるよう、一般的な進み方をご案内します。

訴状の作成

「裁判」は、管轄の裁判所に原告が「訴状」を提出することにより開始します。

訴状には、不倫相手に支払いを求める慰謝料の金額や、その根拠となる事実関係を記載します。

基本的な事実関係の確認・証拠の確保などは、これまでの業務の中で、ある程度進んでいる状態と思われます。これを弁護士が整理し、「訴状」と「証拠」という形にまとめます。

法的・専門的な検討や書面作成は全て弁護士が行いますが、その前提として詳細な事実関係の聴取を再度実施することもありますから、ご協力をお願いします。

訴状が完成した後、ご本人のチェックを経て、管轄裁判所に訴訟を提起します。

裁判の管轄について

これは「どこの裁判所で裁判を起こすか」という問題です。

基本的に不倫慰謝料の裁判は、ご本人(あなた=慰謝料を請求する側)の居住地を管轄する裁判所に提訴します。

もし不倫相手が遠方在住の場合でも、裁判はこちらの地域の裁判所で始まりますから、不倫相手がどこに住んでいるかによって、あなたが地域的な不利益を被ることはありません。

訴状の送達

原告(請求する側)が裁判所に「訴状」を提出し、適正に受理されると、「訴状」の写し(副本)が、被告である不倫相手の住所地に送達されます。

また訴状の送達に際し、裁判の第一回期日も指定されます。
一般的には、訴訟提起から1ヶ月~2ヶ月程度先に、第一回の裁判期日が指定される形です。

ただ、第一回期日は被告(不倫相手)の都合を聞かずに指定されるため、被告(不倫相手および、相手の代理人弁護士)は「答弁書」を提出の上で裁判期日を欠席することが許されています。
実際、ほとんどのケースについて、被告は初回期日を欠席するため、実質的な主張立証が始まるのは、第二回期日以降ということになります。

このように、裁判を起こしたからといって、すぐ開廷して手続が進んでいく訳ではなく、少し時間がかかるものであるという点は予めご了承いただければと思います。

期日の出廷

裁判期日は、平日の日中です。
原告・被告の双方が期日に出廷し、主張や反論を述べていく形が原則となります。

ただ弁護士に依頼されていれば、出廷も含めて弁護士が全て対応しますから、請求された方ご本人が裁判所に出向く必要はありません。(後述する「尋問(じんもん)」実施の場合は別です)

裁判の期日では、一方が何らかの主張をすると、次回の期日に、もう一方が反論と証拠提出を行うという流れが一般的です。

期日は1ヶ月~2ヶ月程度の間隔で実施されますから、双方が主張・反論を尽くし、手持ちの主要証拠を全て出して話が煮詰まってくるまでには、ある程度の時間はかかります。
裁判の経過は、弁護士から随時ご報告を差し上げ、必要に応じて方針検討のための打ち合わせなどを実施させていただきます。

和解案が出る場合

不倫慰謝料訴訟の実務では、「判決」まで徹底的に争われることは少なく、裁判の途中で「和解」が成立して終了するケースの方が多数派となっています。

裁判の中で、双方の主張・反論が出尽くした段階になると、裁判官から案件内容をふまえた和解案が示されることが通常です。多くの場合、この和解案を元に若干の調整が行われ、原告・被告双方が合意して裁判上の和解が成立しています。

慰謝料を請求しているご本人からすると、「相手と"和解"をする必要があるのか」というお気持ちも、あるかもしれません。
もちろん和解案を拒否して「判決」を目指してもよいのですが、和解案は裁判官が双方の主張・立証をふまえた上で提案しているものですから、判決に先立って、裁判官の心証が加味された内容になっている可能性があるものです。

「判決」を得るためには、後述するとおり通常「尋問」という手続を経る必要がありますから、ご本人様にとっても大きな負担となります。こうした負担を乗り越えて「判決」に持ち込んだとして、現在の和解案よりも大幅に有利な「判決」が出る余地があるのか? という点は、慎重な検討が必要な部分です。

(和解案は具体的な支払金額も示されるため、受け入れるかどうかを事前に検討可能ですが、判決は実際に言い渡されるまで、内容が分かりません。予想に反し、和解案よりも不利な内容の判決が出てしまうリスクも考慮しなければなりません。

また、和解であれば、例えば「今後二度と会わないこと」など、金額面以外の条件も柔軟に付帯できる場合がありますが、判決の場合は「被告は○○円を支払え」あるいは「原告の請求を棄却する」という金銭請求についての判断が主となり、他の条件は付帯できません。

このような事情もあり、裁判官から和解案が示された場合、若干の内容調整を行った上で、これを受け入れるという展開が結果的には多くなっています。

もちろんご本人のお気持ち次第が大事な部分であり、相手の出方にもよりますから、和解案が出た場合には、担当弁護士から十分ご説明を差し上げつつ、具体的な方針について相談をさせていただきます。

裁判上の和解をした場合

「裁判上の和解」が成立すると、裁判所により和解調書が作成されます。
この和解調書には、確定判決と同等の効力があり、裁判外で作成された示談書とは全く異なる強力な法的効果を有するものです。

和解調書に定められた慰謝料の支払期限を守らなかった場合、相手の「預金口座」や「給料」を差し押さえることも可能となります。

和解調書に定めたとおり金銭の支払いが履行された場合、今回、不倫慰謝料請求を受けた案件は基本的には終了となります。

尋問

双方の主要・要求が折り合わず、どうしても「和解」が成立しない場合、裁判は「判決」の方向に向かいます。
こうした場合、通常は「判決」の前に「尋問」という手続が実施されます。

「尋問」とは要するに、裁判の終盤まで双方の主張する事実関係が食い違っているなど、「結局どうなのか」がハッキリしない部分がある場合に、当事者本人や証人を裁判所に呼んで、発言の整合性や矛盾点、態度、雰囲気などを裁判官が直接確認することで、判決を書くための心証を形成する材料とするための手続きです。

「尋問」の場では、こちらの弁護士からの質問、相手の弁護士からの質問、裁判官からの質問などが行われ、それに対して個別に発言をしていただくことになります。

質疑応答のシナリオおよび、相手弁護士から質問があると想定される事項の対応については、事前に担当弁護士と十分な打ち合わせを実施します。何もわからない状態で法廷に立つということはありませんので、その点はご安心下さい。

ただ不倫慰謝料請求の裁判で「尋問」が実施される場合、通常は原告本人・被告本人の両方が裁判所に呼ばれますから、「尋問」の場で、あなたは配偶者の不倫相手と、顔を会わせることになります。ご本人としては、今回の不倫相手と法廷で対面することで、不快感を覚えるかもしれません。

相手弁護士からは、「夫婦関係は、すでに破綻していたのでは?」といった質問があることも想定しなければならず、相手本人が、不貞行為の事実自体を否定するといった態度に出てくることもありますから、そうした部分も、不快感やストレスを覚える展開になるかもしれません。

また「尋問」は公開法廷で行われますから、本件に何の関係もない一般の傍聴人が、法廷の傍聴席で話を聞いている場合も珍しくはありません。

多くの場合、事前に打ち合わせをした通りに問題なく「尋問」を終えてはいるものの、強い気持ちで臨む必要があります。

このように「判決」の前段階に実施される「尋問」は、ご本人様にとっても負担やストレスのあるものです。

案件内容によっては、それでも「判決」を目指して徹底抗戦せざるを得ないケースもありますが、どのような「判決」が出るのかを事前にハッキリ予測することはできませんから、「和解」に応じるか「判決」を目指すかという判断は、担当弁護士と十分な相談の上で決断していただきます。

判決

最後まで和解が成立しない場合、最終的には「判決」が言い渡されます。

「判決」の内容というのは結構シンプルで、原告の請求が一部ないし全部、認められた場合「被告は原告に対し、○○円を支払え」という感じになり、原告の請求が全く認められなかった場合「原告の請求を棄却する」という内容になります。

「認容」か「棄却」か、支払いを命じられた金額はいくらか、原告が仮執行できる内容か、訴訟費用の負担割合はどうか、といった部分を確認した上で、判決確定までの間に、「控訴」するかどうかを判断しなければなりません。

判決が確定すると、本来であれば速やかに判決認容額および遅延損害金の金額を支払うべきなのですが、これを無視して支払いをしない相手も、ごく少数ですが実際に時々みられます。

こうした場合は、やむを得ず相手の銀行預金や給与などを差し押さえる、強制執行の手続を検討します。

当事務所では裁判から差押まで、一貫して弁護士が「代理人」としてお手伝い可能です。

不倫慰謝料裁判の一般的な流れは、このようなものです。
詳細は法律相談の際や、正式ご依頼後の打合せの際にも、案件ごとのご事情をふまえつつ、弁護士からご説明を差し上げます。

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