裁判のメリット・デメリット

不倫慰謝料の請求をするにあたり、必ず裁判をしなければならない訳ではありません。
しかし、相手の態度によっては、裁判が非常に有効な手段となる場合があることも事実です。

裁判のメリット

  • 裁判を起こしたことで、相手へのプレッシャーが増し、「裁判上の和解」や裁判外の交渉を有利に運べる場合がある
  • 裁判官による、実務上適正な判断が期待できる
  • 裁判所の「和解案」を受け入れるよう、裁判官から相手への説得が行われる場合がある
  • 相手が不誠実な態度に終始し、あくまで和解を拒んだ場合でも、最終的には「判決」という形で結果が出る
  • 支払を命じる確定判決により、相手の給与や預金を差し押さえることが可能

裁判のデメリット

  • 判決は裁判官の心証によるため、判決内容を確実に予測することはできない。予想していたより悪い結果になる可能性もある
  • 裁判期日は1か月~2か月おきに設定されるため、主張・反論が煮詰まるまでに少し時間が必要。相手の出方によっては、解決まで時間がかかる場合がある
  • 「尋問」が実施される場合、被告本人に大きな負担・プレッシャーを与えることができるが、原告本人も裁判所に呼ばれるため、こちら側もある程度の負担は避けられない

裁判のメリットについて

「裁判」というと、「判決」を得るための手段というイメージを持たれるでしょうか?

もちろんそれは正しい理解ですが、不倫相手の立場で考えると、「裁判を起こされるかもしれない可能性」や、「実際に裁判を起こされた場合の負担」自体が、大きなプレッシャーになることも、ご想像いただけると思います。

したがって、「裁判」という解決手段は、最終的な「判決」という成果だけでなく、交渉段階での示談や、裁判上の和解を有利に運ぶという影響力も有しており、様々なメリットがあるものです。以下、具体的にご紹介します。

不倫慰謝料請求の「裁判」を起こすと、こちらが「原告」(慰謝料を請求する側)、不倫相手は「被告」(請求される側)という立場におかれます。

不倫行為・不貞行為があったことは原告が主張・立証する必要がありますから、原告は不倫相手が残したメールや写真、手紙、探偵の調査結果など様々な資料を、証拠として裁判所に提出することになります。

本来、他人に見せる想定などしていなかった私的なメールや写真が、一つ一つ証拠として裁判で取り上げられることになりますから、単なる交渉の段階に比べ、不倫相手に生ずる心理的なプレッシャーは格段に高まることでしょう。
こうしたメールや写真の公開自体を不倫相手が望んでいない場合、「裁判」を起こす可能性を背景にした「交渉」も、有利に運ぶことが期待できます。

また、裁判の期日は平日の日中に指定されます。
被告(不倫相手)は訴えを起こされた裁判所に、自分で平日の日中に出廷するか、あるいは弁護士に依頼して出廷してもらう必要が生じますから、これも相手に対する物理的・経済的な負担となります。

被告(不倫相手)が最後まで徹底抗戦しており「裁判上の和解」が成立しない場合、裁判所は多くの場合「判決」に向けて、「尋問(じんもん)」という手続を実施します。

この場合、原告本人・被告本人の両方が、裁判所の法廷に呼び出される展開となります。

尋問が実施された場合、被告(不倫相手)本人は裁判所の法廷に立ち、原告の弁護士や裁判官から、不倫行為の有無や、主張の整合しない部分などについて、全く無関係の傍聴人も見ている公開法廷で、指摘や質問を受けることになります。

このように、実際に裁判を起こした場合、不倫相手にかかってくる様々な負担・プレッシャーは中々大きなものです。
※尋問になると、原告ご本人も裁判所に呼びだされ、被告の弁護士や裁判官から質問を受けることになるため、こちら側にとっても負担はあります。ただ多くの場合、被告側の受ける負担・プレッシャーの方が、ずっと大きなものになると思います。

「裁判」になること自体の負担、「裁判」が進んで「尋問」になることの負担から、交渉段階では慰謝料の支払に応じなかった不倫相手も、裁判手続の中で折れてくることは実際によくみられます。

また「裁判」を起こした場合、不倫相手が最後まで徹底抗戦してきたとしても、最終的には「判決」という形で結論が出るという点も、大きなメリットです。

判決の内容、「慰謝料請求が認容されるのか」「認容されるとして、その金額がいくらか」を事前にはっきり予測することはできないものの、原告が不倫行為の存在についてきちんと立証できていれば、実務的に想定可能な金額の範囲内で、被告に対して慰謝料の支払を命じる判決が言い渡されることが通常です。

被告に慰謝料の支払いを命じる判決が確定すれば、もし不倫相手が確定判決に従わず、慰謝料を支払ってこない場合でも、相手の預金口座や給料債権を強制的に差し押さえることも可能となります。

このように、「裁判」という解決方法には様々なメリットがありますから、始めから「裁判」という選択肢を除外して解決を目指すという考え方は、合理的ではありません。

実際に「裁判」を起こすかどうかは、ご本人のお気持ちや個別の事情により、柔軟に判断していけばよいのです。

裁判のデメリットについて

一方、裁判を行う場合のデメリットですが、仮に判決が言い渡されるまで徹底的に争った場合、交渉でスムーズに解決できた件に比べると、一般的には時間がかかることが多くなります。

※ただ、解決手段を交渉に限定してしまうと、相手の「これだけしか払えない」といった態度に対して何の強制手段も打てず、ズルズルと交渉が長期化してしまうリスクもあります。「裁判=長期化」といった、単純な話ではありません。
(→ 「裁判を起こすと時間がかかりますか?」

また判決の内容は裁判官の心証によるものですから、どのような判決が言い渡されるのか、慰謝料の金額はいくらなのか、事前に予想しきれない部分があります。

したがって、不倫行為を根拠づける写真やメールなどの証拠が十分そろっているケースであればともかく、証拠不十分なケースでは、ご本人が希望されているような判決内容になるかどうか、楽観的にはなれない場合もあります。

このように、最終的な結果を事前にはっきり予測できない(判決が出てみないと分からない)点も、裁判という解決手段のデメリットです。

もちろん、実際に裁判を進める場合には、ただ漫然と「判決」を待つ訳ではありません。

後述するとおり実際には、裁判の中で「和解」が成立するケースが多数派ですから、まずは少しでも有利な条件で「裁判上の和解」が成立するよう、積極的に主張・立証を尽くします。

裁判官の本心は「判決」まで分かりませんが、実務的には裁判期日の中で、裁判官からある程度の心証が示されるケースも多いです。

弁護士がこれまでの経験や案件の内容、裁判官の発言を検討し、「こちらの主張がどの程度通りそうか」「判決を希望すべきか、和解に応じるべきか」という点について、ご本人様と十分にご相談をしつつ進めてまいります。

裁判を起こした後で和解するという手法

以上のように、不倫慰謝料請求の裁判にはメリットとデメリットがありますが、折衷的な解決策として、裁判の途中で、裁判官が提案してくる和解案を受け入れるという選択肢もあります。

実務上は不倫慰謝料請求の裁判において、判決まで争われることはむしろ少なく、裁判の途中で和解して終了するケースの方が多数派です。

不倫慰謝料を請求しているご本人からすると、「不倫相手と和解するなんて、とんでもない!」というお気持ちもあるかと思います。
もちろん、あくまで徹底的に慰謝料を請求して判決を得るという方針でも当事務所としては問題ありませんが、こうした和解は冷静に考えると、以下のように一考すべき価値があるものですから、ひとまずご紹介します。

  • 裁判官の和解案は、裁判手続で明らかになった主張立証をふまえ、裁判官の検討結果として出されています。つまり、これから出される判決内容が、ある程度反映されたものとも考えることができます。
    (これから尋問を経て判決まで争ったとしても、今出されいる和解案と大差ない結論となる可能性が否定できません。)
  • 判決と異なり、和解案では慰謝料の金額が具体的に示されるため、持ち帰って検討することができます。(判決の場合、言い渡される時まで内容は分かりません。)
  • 判決と異なり、「不倫の事実を第三者に口外しないこと」「今後、二度と合わないこと」といった付帯条件を調整し、和解内容に盛り込む事ができます。

このように、裁判上の和解は判決に比べて柔軟な解決を実現できるため、あなたの利益に資する場合も多いかと思います。
裁判所から和解案が出た場合、弁護士が内容を十分検討の上で、どう対応すべきかをご相談させていただきます。

不倫慰謝料の請求においては、裁判をするかしないか、裁判を起こしたとして、「和解」か「判決」か、事案に応じた様々な選択肢と展開があり得るものです。

具体的にどういった方針を選択することが、最もご本人の利益やご希望に合致した結果となるか、弁護士が慎重に判断しつつ、十分ご説明を差し上げながら進めてまいります。

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