不倫慰謝料の支払いについて、金額面や条件面で相手と折り合うことが出来なかった場合、裁判を起こされることがあります。
当事務所で扱っている不倫慰謝料案件では、「請求する側」「請求される側」いずれも、裁判になっている件は珍しくありません。
「あなたの件についてどうなるか」を事前に予測することは難しいですが、比較的、不倫慰謝料というジャンル自体が裁判になりやすい性質であるとお考え頂いたほうがよいかもしれません。ただ、実際に裁判となってしまうケースは全体の1~2割程度ですから、最初から裁判を過度に心配される必要まではありません。
ある程度、裁判の具体的なイメージを持っていただくことが冷静な対処にもつながると思いますので、裁判を起こされた場合の、一般的な手続きの流れ・進み方をご紹介したいと思います。
不倫慰謝料の裁判は、原告(請求する側)が、管轄の裁判所に訴訟を提起することから始まります。
いきなり裁判を起こされるケースは少なく、多くの場合、相手本人または相手の代理人弁護士との交渉が先行します。交渉の中で、慰謝料額や前提事実の認識などが折り合わない膠着状態になった場合、相手が交渉を断念して裁判を起こしてくるという展開が多いと思います。
原告が裁判所に提出した訴状は、裁判所から、被告(あなた=請求される側)のご自宅に送達されます。
※すでに弁護士へ依頼済であり、弁護士が相手と交渉中のケースであっても、相手が裁判を起こしてきた場合、裁判所から送達される「訴状」は、弁護士の事務所ではなく、ご本人様の自宅に届きます。
「訴状」さえ受領すれば、その後の送付書面は全て弁護士の事務所で受領できますから、最初の「訴状」送達だけ気を付けてください。
※訴訟が起こされる前に相手の弁護士と協議し、弁護士が裁判所窓口で「訴状」を受領することができたケースもあります。常にこうした受領方法を指定できるわけではありませんが、最大限配慮はさせていただきますので、ご心配な点も含めて、法律相談の際におっしゃって下さい。
訴状の送達に際して、裁判の「第一回期日」も指定されます。
最初の期日は、こちらの予定と関係なく指定されていますから、答弁書を提出した上での欠席も可能です。その場合、実質的な主張立証が始まるのは、第二回期日以降ということになります。
このように、裁判を起こされたからといって、すぐ開廷して手続が進んでいくわけではなく、少し時間がかかるものであることは予め知っておいてください。
不倫慰謝料の裁判は、原告(慰謝料を請求する側)の居住地を管轄する裁判所に提訴されることが通常です。
相手の居住地が基準となるため、非常に遠方の裁判所で裁判を起こされることもありますが、電話会議という方法を用いて現地に出廷せず対応するケースも多いですから、裁判期日のたびに必ず弁護士の出張費用が生じるわけではありません。
裁判期日は、平日の日中です。
原告・被告の双方が期日に出廷し、主張や反論を述べていく形が原則となります。
ただ弁護士に依頼されていれば、出廷も含めて弁護士が全て対応しますから、請求された方ご本人が裁判所に出向く必要はありません。(後述する「尋問(じんもん)」実施の場合は別です)
裁判の期日では、一方が何らかの主張をすると、次回の期日に、もう一方が反論と証拠提出を行うという流れが一般的です。
期日は1ヶ月~2ヶ月程度の間隔で実施されますから、双方が言いたい事を言い尽くして話が煮詰まってくるまでには、ある程度の時間はかかります。
裁判の経過は、弁護士から随時ご報告を差し上げ、検討が必要になった場合には随時打ち合わせを実施しながら進めてまいります。
不倫慰謝料訴訟の実務では、「判決」まで徹底的に争われることは少なく、裁判の途中で「和解」が成立して終了するケースの方が多数派となっています。
裁判の中で、双方の主張・反論が出尽くした段階になると、裁判官から案件内容をふまえた和解案が示されることが通常です。多くの場合、この和解案を元に若干の調整が行われ、原告・被告双方が合意して裁判上の和解が成立しています。
慰謝料を請求されているご本人からすると、「相手と"和解"をする必要があるのか」というお気持ちも、あるかもしれません。 もちろん和解案を拒否して「判決」を目指してもよいのですが、和解案は裁判官が双方の主張・立証をふまえた上で提案しているものですから、判決に先立って、裁判官の心証が加味された内容になっている可能性があるものです。
「判決」を得るためには、後述するとおり通常「尋問」という手続を経る必要がありますから、ご本人様にとっても大きな負担となります。こうした負担を乗り越えて「判決」に持ち込んだとして、現在の和解案よりも大幅に有利な「判決」が出る余地があるのか? という点は、慎重な検討が必要な部分です。
また、和解であれば、分割払いの方式など付帯条件を柔軟に調整する余地がありますが、判決の場合は「○○円を支払え」または「請求を棄却する」という、白黒がハッキリした形の結論となる上、原告の請求が認容される場合は一括払が前提となります。
このような事情もあり、裁判官から和解案が示された場合、若干の内容調整を行った上で、これを受け入れるという展開が結果的には多くなっています。
もちろんご本人のお気持ち次第が大事な部分であり、相手の出方にもよりますから、和解案が出た場合には、担当弁護士から十分ご説明を差し上げつつ、具体的な方針について相談をさせていただきます。
「裁判上の和解」が成立すると、裁判所により和解調書が作成されます。
この和解調書には、確定判決と同等の効力があり、裁判外で作成された示談書とは全く異なる強力な法的効果があります。
和解調書に定められた慰謝料の支払期限を守らなかった場合、預金口座や給料を差し押さえられる可能性もありますから十分注意が必要です。
和解調書に定めたとおり金銭の支払いを履行した場合、今回、不倫慰謝料請求を受けた案件は基本的には終了となります。
(「不貞の事実を第三者に口外しない」「今後は二度と会わない」といった条項が定められた場合、これを遵守していくことは今後も必要です。)
双方の主要・要求が折り合わず、どうしても「和解」が成立しない場合、裁判は「判決」の方向に向かいます。
こうした場合、通常は「判決」の前に「尋問」という手続が実施されます。
「尋問」とは要するに、裁判の終盤まで双方の主張する事実関係が食い違っているなど、「結局どうなのか」がハッキリしない部分がある場合に、当事者本人や証人を裁判所に呼んで、発言の整合性や矛盾点、態度、雰囲気などを裁判官が直接確認することで、判決を書くための心証を形成する材料とするための手続きです。
「尋問」の場では、こちらの弁護士からの質問、相手の弁護士からの質問、裁判官からの質問などが行われ、それに対して個別に発言をしていただくことになります。
質疑応答のシナリオおよび、相手弁護士から質問があると想定される事項の対応については、事前に担当弁護士と十分な打ち合わせを実施します。何もわからない状態で法廷に立つということはありませんので、その点はご安心下さい。
ただ不倫慰謝料請求の裁判で「尋問」が実施される場合、通常は原告本人・被告本人の両方が裁判所に呼ばれますから、「尋問」の場で、あなたは不倫相手の配偶者と、顔を会わせることになります。
相手弁護士からは、不貞の具体的内容にも踏み込んだ質問が行われることも想定しなければならず、また「尋問」は公開法廷で行われますから、本件に何の関係もない一般の傍聴人が、法廷の傍聴席で話を聞いている場合も珍しくはありません。
多くの場合、事前に打ち合わせをした通りに問題なく「尋問」を終えてはいるものの、ご本人としては大きなプレッシャーや不安を感じたという方も、少なくないと思います。
このように「判決」の前段階に実施される「尋問」は、ご本人様にとっても負担のあるものです。
案件内容によっては、それでも「判決」を目指して徹底抗戦せざるを得ないケースもありますが、どのような「判決」が出るのかを事前にハッキリ予測することはできませんから、「和解」に応じるか「判決」を目指すかという判断は、担当弁護士と十分な相談の上で決断していただきます。
最後まで和解に至らなかった場合、最終的には「判決」が言い渡されます。
「判決」の内容というのは結構シンプルで、原告の請求が一部ないし全部、認められた場合は「被告は○○円を支払え」という感じになり、原告の請求が全く認められなかった場合は「原告の請求を棄却する」という内容になります。
「認容」か「棄却」か、支払いを命じられた金額はいくらか、原告が仮執行できる内容か、訴訟費用の負担割合はどうか、といった部分を確認した上で、判決確定までの間に、「控訴」するかどうかを判断しなければなりません。
原告の請求を認容する判決が確定した場合、速やかに支払を実行しなければ、あなたの預金や給与などが差押えられる(強制執行される)可能性もあります。
実際の支払額は、判決の認容額に遅延損害金が加算されますから、支払額が思ったより大きくなるケースもあります。
「ある程度の支払は避けられない」と想定されるケースでは、事前の資金準備も必要です。
不倫慰謝料の裁判を起こされた場合の一般的な流れは、このような形になります。
詳細については、最初の無料法律相談や、正式ご依頼後の打合せの際、案件ごとのご事情をふまえつつ弁護士からご説明を差し上げます。
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